こんな電話があるということを、
NHKの番組で初めて知りました。


岩手県大槌町の丘の上の私有地に建っている
白い電話ボックス。


電話線にはつながっていないけれど、
時どき人が訪れて


黒いダイヤル式の受話器を取り
耳に当て


呼びかけるのです。


両親と妻と1歳の子供を亡くした男性。
一度でいいから、パパって言ってほしかった、と。


小さな子供を二人連れた年配の女性。
地元で暮らすお祖母さんと二人の孫。


「もしもし、じいちゃん、今元気?
僕3学期こしたら4年生になるよ。」


何もしゃべらないけど、
おじいちゃんの声が聞こえるような気がする。。


女性の3人組。
ひとりの女性が友人に背中を押され、
入っていきます。


津波で息子を亡くした女性。


「マサ、何年ぶりだよね。
あんたの声も聞きたいけどさ、
聞こえないしね。


あのね、みんな元気だから」


この電話が置いてあるのは佐々木格さんという方の個人の庭。


電話を置いたのは、
震災の1年前に亡くなった従兄弟と
話がしたいと思ったから。


自分の思いを「線」ではつながらないから、
風に乗せて伝えるんだと。


それで「風の電話」。


それから1年後。


高さ13mの波が
町を壊滅状態にしました。


861人が亡くなり、
今も421人の行方が分かっていない。


残された人たちのため
佐々木さんは「風邪の電話」を開放しました。


どんな苦労や辛いことがあっても
希望があれば生きていける。


だから、その想いをつなぐもの
帰らぬ人に想いをつなげることができる
ということが大事だなと思って。


電話を訪れるのは男性が多いと言います。


息子を亡くし、残された妻とどうにか生きてきたのに
昨年その妻を病気で亡くした男性。




妻と娘と母親がまだ行方不明の男性。


「早く見つかれ。早く帰ってこ。
元んとこさ家建てっから。
どこでもいいから、生きてろ」


「時々、なんのために生きているんだか
わからなくなる時があるんだよ。


新しい家を建てても、
父さん、母さん、ミネちゃん、イッセイがいないから
意味がない。


返事を聞きたいのに聞こえない。。」


八戸から4時間かけてきた15歳の少年。
どうしても父と話がしたくて、ひとりで来た。


「父さん、家族4人みんな頑張ってるから。
父さんは元気?


聞きたいことが1つある。


なんで死んだんだよ。
なんで父さんなんだよ。


なんで、俺だけなんだよ。」


「とにかく、さっさと見つかってよ。
今どこにいるの?」


トラック運転手のお父さんは、あの日、
急なシフト変更で海沿いの大船渡市を目指す途中で、
消息を絶ちました。


夫と家を失った女性。
黒電話で、失った家の電話番号を回します。


でも、一言も話さず受話器を置きます。


津波で妻と次男を亡くした男性。




津波で妊娠中の娘を亡くした父親。


父親に自殺された息子。


ぽつんぽつんと
それでも次々と


電話ボックスを目指して人がやってきます。


受話器を持ったまま
何もしゃべらない女性。


そして、
4時間かけて八戸からやってきた少年の家族。
残された家族4人が震災後初めて心を開き
父親に対する気持ちを言葉にします。


平凡な日常がいかに掛けがえのないものか。
失ったときに初めてわかるのかもしれません。
重い事実として。。