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1995年1月17日に起きた阪神・淡路大震災
6434人の命が奪われた、この大震災の経験を活かし、防災の現場で活躍する人たちがいます。


被災地で暮らす障害者の支援を続けている八幡隆司さん。八幡さんは、災害時に障害者が孤立しない社会、を目指して活動しています。

災害時に障害者が孤立しない社会とは?

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「ようやく復興の兆しが少し見えてきた、というところですかね」と、東日本大震災で大きな被害を受けた東北沿岸部を車で回りながら八幡さんが言います。


この日訪ねたのは、岩手県宮古市内の仮設団地。
83歳のお父さんとダウン症の息子の二人で暮らす柿崎さん親子。仮設住宅での暮らしも3年が過ぎました。


「津波大変やったな。お父さんとも離ればなれの生活だったもんな?」と八幡さん。

息子が一言「怖い」。


八幡さんは定期的に柿崎さんのところに通い、避難生活の中で感じる不安や困りごとに耳を傾けてきました。


「二人きりの生活でしょ?私が倒れたら終わりですから。今は生きるので精一杯」とお父さんが言います。


八幡さんは、「本当は実君もグループホームのようなところに入れたらいいですよね。親の手を借りないでひとりで住めるところがあったら、一番いいですよね」と。
八幡さんは、「障害者を孤立させないために、継続的に関わっていくこと」が大切な支援の1つだと考えています。


「忘れていないよ、と言ったらちょっと変ですが、孤立しないように、訪問してつながっていく。人と会話することでちょっと楽しみが増えるということだけでも、ずいぶん違うと思います」と、穏やかに話す八幡さん。

障害者の人権が地震で崩れる?!

1995年1月17日に起きた阪神・淡路大震災。
そこで1つの課題が浮き彫りになりました。
災害が起きたとき、高齢者や障害者などの災害弱者をどう守るか?ということ。


学生時代から障害者を介助するボランティアをしてきた八幡さん。
被災直後、ある公園に救援活動の拠点を作り、被災した障害者の支援に当たりました。


「常時20~30人はここで寝泊まりして過ごすような生活をしていました」、八幡さんは実際に公園を案内しながら説明します。


支援活動の中で八幡さんが目にしたのは、助けを求められず崩れた自宅で何日も過ごした身体障害者。


避難所に行ったものの、知らない人たちばかりでパニックになり、避難所を求めて転々とした知的障害者。


災害が起きたときに、障害者がまっ先に窮地に立たされるという現実を突き付けられたのです。


「自分たちはある程度福祉というものがまともになってきたと思っていた。でも、地震が起きると、こんなにも何ともなっていないのか。ヘルパーについても派遣がままならない状況だし、避難所なんてバリアだらけだし、他の人たちも障害者についての関心がまだまだ薄かったということもあった。障害者の人権って、地震でこんなに崩れるんだ、というのが自分たちの印象でした」。


もう二度と災害が起きたときに障害者を孤立させたくない。八幡さんは、被災した障害者のNPOを仲間と共に立ち上げました。


「ゆめ風基金」
活動を始めてから19年。これまで31の災害で被災した障害者の支援をしてきました。

災害時だけではない“コミュニティ”の大切さ

岩手県田野畑村。
今、八幡さんが通う東日本大震災の被災地でも、障害者の孤立が問題となっています。

訪ねたのは、脳性麻痺の小野光さん。
家族や通っている作業所の職員以外の人とはほとんど接点がありません。

「家にいててもすることないって、言ってたやろ?」と八幡さん。

そんな光さんに、八幡さんはタブレット端末を届けました。インターネットを使うことで、自分から何かを発信したり、外の世界とつながったりしてもらえればと期待しています。


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「いろいろ知り合いが増えていけば、誰がどうしているかも気になるし、約束もしたいと思うし、ちょとずつ彼女の生活の幅を広げていくために何が必要かということが大事だと思います」。


八幡さんは今、宮城県の被災地でもう1つ取り組んでいることがあります。


障害者が地域の人たちと一緒になって行うイベントの企画です。
「にょっきりフェスタ」


これまで関西で行ったイベントでは、障害のありなしにかかわらず、一緒に体を動かしたり、歌を歌ったりして交流をしてきました。


障害者と健常者がお互いを知ることで、災害が起きたときに助け合える、と八幡さんは考えています。


今回、被災地でのイベントも、障害者と地域の人たちが声を掛け合えるきっかけを作ることが狙いです。


障害者を持つお母さんたちも、「スタッフでもボランティアでも、地元の人を巻き込んで短く濃い縁ではなくて、平たくてもいいからとにかく広く」つながりを持ちたいと願っています。


障害者を孤立させないという八幡さんの思いは、このイベントにも託されています。


「特別に災害のときに何かするのではなくて、普段から健常者と障害者が仲良く一緒に暮らしている。その状態がなければ防災にならないと思っているので、いろんな形で、それこそ、防災訓練でなくても、お祭りでいいから、健常者と障害者の人がよいコミュニティを作っていくことが大事」


八幡さんが目指す“防災”。それは、日常からの人と人とのつながりの中にあります。

最後に

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家族や親戚、友人に障害を持つ人がいない限り、身体や知的障害の人と触れ合うことはあまりありません。


なので、実際にどう接していいのか、なにか失礼なことをしてしまうのではないか、と怖れる気持ちが、障害を持つ人との距離を取ってしまうことにもつながると思うのです。


特に「ボランティア」という意識を持たなくても、地域で定期的に行われる障害者が参加するイベントなどに足を運んでみることから始めてもいいのではないかと思います。


まず、障害者の人たちと「接する」こと。そこから「知ること」が始まります。